工場・倉庫の土地探しで考慮すべきポイント
実際に工場を建築する、または増改築を進めることを決断する段階になると、資金確保をはじめ、様々な準備が必要になってきます。また、具体的な検討の前提条件となる、遵守すべき法規などの確認も不可欠です。工場内部の工程設計、新設備導入、レイアウトについての具体的検討をスムーズに進めるために、チェックしておくべきポイントを整理しましょう。
工場を新たに建築する、または建て替えるとなると、まず、立地拠点の選定が重要になります。
工場の用地として適しているかどうかは、主に3つの視点が必要です。
- 1つ目は立地条件(法的規制、敷地の状況、地盤や障害物の状況、地歴、道路の状況、周辺環境、インフラの整備状況)の確認
- 2つ目は予算と購入費用
- 3つ目は支援制度の確認
次にそれぞれのポイントを見ていきます。
立地条件の確認
工場建設における立地条件とは法的規制、敷地の状況、地盤や障害物の状況、地歴、道路の状況、周辺環境、インフラの整備状況などを指します。ひとつひとつの条件は以下のとおりです。
法的規制
土地にはさまざまな法的規制があります。建築基準法では、地域を区分しそれぞれの地域の特性に応じて、建築できる建物の種類などを定めています。これを「用途地域による建築物の用途制限」と言い、住宅地域、商業地域、工業地域の3つに大別されております。
また、この用途地域に対応して、敷地面積に対する建築面積の割合(建ぺい率)や延床面積の割合(容積率)が制限されています。
それ以外にも、自治体別の条例や地区レベルでの規制が設定されている場合や、工場立地法などによる制限を受ける場合がありますので、個別で事前の確認が必要です。
敷地の状況
建築計画にある工場を建てるために、土地の面積は十分か、敷地内の高低差はどの程度か、敷地境界が明確になっているかなど、敷地の形状や権利関係などについて確認しましょう。
地盤や障害物の状況
地盤によって、建物の沈下を防ぐための杭が必要となる場合があります。杭の長さは、支持地盤までの深さによって変化するため、工事コストに影響します。工場の建築において、地盤はとても重要な部分なので確認が必要です。また、地中の埋設物調査もあわせて実施する必要があります。
地歴
水害などの自然災害が発生しやすい場所ではないか、また造成された土地であれば、切土か盛土かといったような、土地の歴史を確認しておく必要があります。また、近年では土壌汚染が深刻な問題になってきていますので、法律に従って調査が行われているかという確認も必要です。
道路の状況
接する道路の道幅や交通量、敷地への出入りのしやすさ、また規制により道路境界線から一定の距離が必要な土地もありますので、注意が必要です。工場の場合、建築中および稼働後も車の出入は必須になるので大事な条件のひとつです。
周辺環境
線路や幹線道路からの騒音・振動、電波障害の有無、近隣住民の状況、交通機関へのアクセス、製品・資材などの物流環境、自社の実情に合った環境の土地を選定します。昼と夜の環境変化や、季節による変化、将来の都市計画にも配慮することが大切です。
インフラの整備状況
電力、ガス、上下水道について、種類・レベルや敷地内への供給状況などを確認します。何もないところだと、インフラ整備のコストもかかることになります。
予算と購入費
上記の条件にのっとって、希望に合致した土地が見つかったとしても、購入費用が計画予算内でなければ、事業として成り立ちません。極端に予算をオーバーするような場合は、計画条件や希望条件を見直す必要があります。また、実際の土地の価格以外にも、税金や登記費用、不動産業者などへの手数料、インフラ整備や整地が必要な場合の費用など、土地購入と工場建設以外の費用についての考慮も必要になります。
支援制度の確認
工場・倉庫用の土地を取得する場合、工場の誘致に積極的な自治体などでは、助成制度を設けているところがあります。
例えば、愛媛県では「製造業等の誘致企業に対する支援」という製造業、流通4業種を対象にした企業立地に対する助成制度を設けております。
土地取得には助成金はでなくても工場建設には出る場合など、いろいろな助成金があるので、工場建設を検討する場合には必ず自治体に確認してみましょう。
工場建築に関する主な規制
工場建築を考える場合は、先行して関連法規のチェックが不可欠です。法規は時代と共に変化するため、変化を見過ごしていると、のちに予期せぬ機会損失を生みかねないため注意が必要です。
工場立地法による規制
製造業などに関わる工場及び事業所で、敷地面積9,000㎡以上、建築面積の合計3,000㎡以上の新設または変更を行う場合が対象となり、事前の届け出の義務の他、以下の規制などが定められています。
- ・生産施設面積率の制限
- ・緑化面積率
- ・環境施設面積率
用途地域による規制
工業地域や工業専用地域ではすべての種類の工業建築が可能です。しかし、住居系地域、商業系地域では、一部の建設が可能ですが、基本的には建築が出来ません。
さらに、用途地域により、敷地内に工場を建築できる建蔽率と容積率の最大値が、それぞれ設定されています。増改築を行う場合も、増改築部分の面積によっては一部既存の建物部分についても、工事着工時点の建築基準法への適合が求められるため、注意が必要です。
耐火・防火・消防に関する規制
各市町村の都市計画で定められる防火地域では、3階建て以上、または延べ面積100㎡を超える場合、および準防火地域で4階建て以上、または延べ面積1,500㎡を超える場合、その他の地域で延べ面積3,000㎡を超える場合は耐火建築物等以上でないと建設不可となります。また、防火地域で2階建て以上かつ延べ面積100㎡以下、準防火地域内で3階建て以下かつ延べ面積1,500㎡以下(2階建て以下、かつ延べ面積500㎡以内の建物は除く)は、準耐火建築物等以上でなければ建設不可となります。
その他、防火区画についても、建築物の種類によって面積区画、堅穴区画、異種用途区画などの区画が建築物内に必要となり、工場内のレイアウト設計時には考慮しなければなりません。ただし、面積区画に従って区画することで製造に支障をきたす場合は免除申請が可能になります。そのため、作業エリアの区画により作業効率を低下させることや、設備導入を断念することを防ぐことができます。
ここで工場の設計経験が少ない建築士に一任してしまうと、区画することが前提の設計になってしまうことがあるため、注意が必要です。必ず、工場内の生産ラインを意識した設計にするよう設計事務所と打ち合わせを行う必要があります。また、消防法においても、様々な条件に基づき、屋内消火栓や屋外消火栓、消防用水、消火器具の設置が義務付けられています。指定可燃物を使用する工場の場合は、さらにその使用量により別途消火設備が必要になります。それらを考慮して、敷地内および、工場内の最適レイアウトを作成する必要があります。
上記の通り、工場の建築設計には立地をはじめ、設計にも様々な条件があり、最適な工場を作るためには工場の建築的な知識が豊富で、設計の専門家に相談することをお勧めします。
よくある質問
- 工場・倉庫を建てるために事業用地を探していますが、最適な探し方がわかりません
土地探しは不動産会社に加え、地盤やインフラ設備、建築物に詳しい地元の設計事務所に早い段階から相談することをおすすめします。